量子力学と古典力学の間
面白かったので、クリップ。
思いがけず自分の名前が出ていたので、ちょっと書きます。量子力学でh→0の極限を取ると古典力学が出てくる、という話、代表的なのはエーレンフェストの定理を使う議論ですが、定理は画像の一行目の形になっています。二行目の形であれば完全に古典力学ですが、少し違う形。 pic.twitter.com/iN6NYoZJXX— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
※念のため、画像部分を抜粋 \begin{align} m\frac{d^2}{dt^2}\langle x \rangle &= \langle F(x) \rangle\\ &\neq F(\langle x \rangle) \end{align}
もしFが一次関数であれば(つまり調和振動子)、一行目と二行目は等しくなりますが、高次項があれば位置のゆらぎが効いてきて一致しない。だから、一般に量子系の位置の期待値が古典的な粒子のように振る舞うのは、波束の幅が十分小さいときだけです。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
じゃあ問題は、どれくらいの時間波束の幅は小さく保たれるか、ですが、もし古典系にカオスがあれば、この時間は非常に短くなります。初期波束は大体プランク定数hに関連した幅を持ちますが、これはカオスでe^{λt}のように指数関数的に拡大される。(λはリアプノフ指数)— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
幅が十分大きくなるまでの時間は、t= (-log h)/λ ぐらいと見積もることが出来ます。ここでポイントは、プランク定数がlogの中に入ってしまうことで、プランク定数がいかに小さくても実は大して影響せず、本質的にはこの時間はリアプノフ指数で決まっていることが分かる。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
これは物理量の次元もまともに考えていない非常に雑な議論ですが、真面目に考えても次元を合わせるための定数は結局logの中に入るので、大して影響しない。要するに、カオスの指数関数的なダイナミクスが非常に速く進行するので、初期波束がいかに小さくてもあんまり関係ないわけです。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
十分波束が広がってしまった後は、位置の揺らぎが大きいからそもそも古典的ではないし、期待値だけ見ても古典力学に従わない、ということでまったく非古典的な運動になります。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
これが@kz_kiyoshi さんの話の前半部分に対応します。純粋に形式的な議論としては、h→0の極限で量子力学から古典力学が出るというのは間違いではないけれど、現実の世界では波束の古典的ダイナミクスが保たれる時間はかなり短く、それだけでは我々の知る古典的な世界を説明できない。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
じゃあどうやって古典的な世界を説明するのか、というと、我々の知るマクロ世界は、少数自由度の量子系でh→0の極限を取るのではなく、マクロな自由度を持つ量子系でマクロな変数に注目することによって得られる、と考えるのが普通です。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
ただし、実際にそのようなマクロな記述を導出するのはもちろん簡単ではなく、田崎さん @Hal_Tasaki も書かれていたように、現時点では単なる標語的なものです。重要な問題なので、多くの人に興味を持って考えてもらいたいと思います。— 杉田歩 (@ayumu_sugita) 2017年6月5日
物理をやっていると誰もが一度は出くわす、量子力学において h → 0 の極限が古典力学だという話。実際には、量子力学と古典力学は波束の大きさで本質的に隔てられていて、これは h の大きさに大して依存しないと。つまり h → 0 の極限で古典力学と整合を取るのは微妙な話で、本当のところは量子力学的な世界をマクロに見た結果が古典力学であると考えるべきらしい。ただそれを記述するのは難しい、らしい。
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